診療科案内脳神経外科

脳神経外科

概要

脳の病気(脳内出血・脳梗塞・くも膜下出血)は前触れも無く急に起こる事があります。日本人には脳血管障害が多く死亡原因の第3位にもなっています。高齢者だけではなく、働き盛りの若い方にも起こります。

当院・脳神経外科では、頭痛・めまい・脳卒中・頭部外傷など脳疾患全般にわたり診療しております。また外来診察時間外や救急搬送についても、柔軟に診療対応できる体制を整えております(CT、MRIも24時間稼動)。

頭痛・めまい等の症状のある方、糖尿病・高血圧等の危険因子をお持ちの方は、早期検査・診断いたしますのでご遠慮なくご相談ください。

担当医師

 
午前診鵜山松本松本松本鵜山鵜山
午後診    〈もの忘れ外来〉
楊川
(予約のみ)
 

  • 脳神経外科の診療指針

    • 佐野記念病院脳神経外科では、神経救急医として救急患者さんの治療を地域医療の中での役割と考え脳卒中、頭部外傷を扱います。24時間365日の緊急時間外受け入れ体制を整えております。
      次に神経外科医として仕事をしています。脳血管障害、脳腫瘍、機能的外科など高度な治療技術を必要とする疾患を扱います。

      脳血管障害では開頭術及び血管内手術が可能であり両治療の利点を最大限生かせるようにしています。未破裂動脈瘤は2014年から2019年では患者さん全員が職場に復帰(家事への復帰を含む)されています(modified Rankin Scale 2point以上の低下無し)。脳動静脈奇形では塞栓術で安全性を高めた上摘出術を行います。脳主幹動脈狭窄では血管吻合術、内膜剥離術、stent留置術を行います。頸部頸動脈狭窄術でも2014年から2019年では患者さん全員が職場に復帰(家事への復帰を含む)されています。機能外科では三叉神経痛に対する微小血管減圧術を行います。

  • 脳血管センター

    • 24時間、恒常的に救急受入れ体制を整え、MRI(1.5テスラ)やCT(16列マルチスキャン)も24時間稼働させ、速やかな確定診断を実施しています。

      またフラットパネル搭載のバイプレーン血管内手術装置は、従来の装置に比べ快適な操作性と放射線被ばくの軽減により手術時間の短縮、安全性の向上が得られています。

      当院には、回復期リハビリテーション病棟、老人保健施設も併設されており、急性期から回復期、慢性期までの一貫した治療、リハビリテーション、介護が可能になります。

      診療実績(天神博志)

      2014年-2019年
      未破裂脳動脈瘤 77例(clipping41例、coil塞栓術36例)
      頸部内頚動脈狭窄 53例(内膜剥離術12例、stent留置術41例)
      小児脳神経外科 5例
      ※全員、職場復帰を果たしています。
  • 医師紹介

  • 扱う疾病について

    • 脳血管障害

    • 高血圧性脳内出血

      • 高血圧症が長時間持続していて、脳血管の脆弱化が生じ脳実質内に出血し、血腫を形成したものをいいます。高血圧性脳出血の症状は部位によって異なりますが、一般的に急激に進行する片麻痺、感覚障害、共同偏視、嘔吐、意識障害などの神経症状です。
        脳出血の手術法には開頭血腫除去術、内視鏡的血腫吸引術などがあります。手術適応は血腫量30ml以上の出血、意識障害例などです。
    • 脳梗塞

      • 脳の血管が詰まり、その部分の脳が破壊される疾患です。ラクナ梗塞(小さな脳内血管の詰まり)、アテローム血栓性脳梗塞(頸部や頭蓋内の大血管に動脈硬化がおこり、そこに血栓ができて動脈が詰まって起こる脳梗塞)、心原性脳塞栓症(心臓での血栓が原因で起こる脳梗塞、心房細動などが原因)の3病型があります。
        塞栓症の治療にはt-PA静脈注射による血栓溶解治療法、血栓回収療法(図1)があります。図1
    • 頸部内頚動脈狭窄に対する脳梗塞予防のための治療

      • 頸部頸動脈狭窄が原因で脳梗塞をきたす可能性がある時には予防的に頸動脈内膜剥離術(図2)やstent留置術(図3)が有効です。(参考文献1, 2)

        (図2)


        (図3)

        脳卒中初回発作後の平均余命は7.5年、5年生存率は50%程度という報告があります。脳卒中になって1~2週間で退院できる場合から数ヵ月から1~2年間リハビリテーション専門病院や療養型病院でリハビリテーションを行って退院できる場合もあります。ただし約20%の方が自宅には帰れません。「脳卒中 予防に勝る 治療なし」です。

    • 脳動脈瘤

      • 脳動脈瘤がある日、突然破裂して「くも膜下出血」という恐ろしい病気を引き起こすことがあります。脳動脈瘤とは、脳の血管(脳動脈)にできる「血管のこぶ」です。こぶができただけでは何の症状もないのが通常です。なぜこぶはなぜできるのかは完全には解明されていません。統計でみると、男性より女性に多く発生します。原因として、生まれつき脳動脈の壁に弱い部分があり、この部分に長年血流が当たり続けることで膨らんでくるという説が有力です。危険因子としては喫煙、高血圧です。
        くも膜下出血の症状は突然の激しい頭痛(普通、脳動脈瘤は破裂する直前まで何の症状はありません。突然バットで殴られたような、これまで経験したことのない激しい頭痛が特徴です。)、おう吐、意識消失などです。出血量が多いと瞬時に意識を失います。さらに最重症型では呼吸停止・心停止に至り、病院に搬送される前に死亡します。
        脳動脈瘤の治療には開頭手術による方法(図4)、血管内手術による方法(図5)があります。

        (図4)


        (図5)

        開頭手術(clipping)は脳外科手術用顕微鏡を使い、慎重な作業となります。直視下に脳動脈瘤の状態を観察しながら行うので確実性が高く、狙い通りクリップがかかれば今後破裂する可能性はまずなくなります。
        血管内手術(coil塞栓術)は体にメスを入れずにすむのが最大の利点で、体力の余裕のない高齢の方や、心臓病など他の病気を持っている方などにとっては負担が軽くなります。
        開頭手術と血管内手術の選択は、脳動脈瘤の場所、形、周りの血管との関係、患者さんの全身状態を総合的に勘案して決めることになります。
        くも膜下出血を防ぐには(未破裂脳動脈瘤の発見・治療)

        くも膜下出血の発生は、脳梗塞や脳出血といった他の脳卒中と違って、高血圧や糖尿病、高脂血症などの全身性疾患を予防すれば必ず防げるというわけではありません。いまのところくも膜下出血を防ぐ唯一の方法は、まだ破裂していない脳動脈瘤(未破裂脳動脈瘤)を発見して処置することです。
        日本脳卒中学会は未破裂脳動脈瘤の治療の手引を作成しています。それによれば、10から15年余命があり脳動脈瘤が直径5-7ミリ程度あれば治療を勧めるべきであるとされています。5ミリ以下であっても破裂しやすそうな形や危険な場所があり、この場合も治療を勧めますが、そうでなければ定期的に検査をして大きさの変化をチェックします。
        予防的治療をする理由は脳卒中などの中枢神経障害は神経症状発現と不可逆的神経症状固定をきたす障害との幅が狭く治療効果があげにくい場合が多いからです。従い神経症状発現前の増悪因子の除去は効果的です。特に脳血管障害ではその当該血管領域や全脳に障害が及ぶことが多く予防医学が重要な位置を占めるようになってきています。未破裂脳動脈瘤は予防的治療が効果的な脳血管障害です。(参考文献3, 4)
        未破裂脳動脈瘤治療による予後不良の割合は破裂脳動脈瘤の1/10以下と考えられます。未破裂脳動脈瘤治療には、確実な治療による予後不良者の減少、安いスクリーニングシステムの構築、が重要です。

        脳動脈瘤スクリーニング
        脳動脈瘤は比較的若い年齢で発生し高血圧などの誘因により増大、50歳以降に破裂するのではないかと考えられます。30-50歳程度の方にスクリーニングを行い発見、合併症なく確実に治療することが効果的です。その年代の方は育児、介護などの担い手で当人が倒れると一家が崩壊します。高血圧、脂質異常症、頭痛を持つ方、特に女性、また病院を受診したことが無い方を対象とするのがより効果的です。(参考文献5)
        脳動脈瘤スクリーニングをする際には受診者は何もないことを期待されています、従い偽陽性や偽陰性、あるいは判定不能は、受診者に不要な不安感を生み出します。あいまいな判定を減少させること、つまり診断精度をあげることが受診者に安心してもらうためには不可欠です。現在それにもっとも適した方法は我々が用いている3DTOFとフリーハンドvolume rendering再構築を用いた方法です。(参考文献6)
        MRA再構築画像
        Coil塞栓時画像
        Coil塞栓後画像
      •  
    • もやもや病

      • もやもや病は東アジアに多く発生するウィルス動脈輪付近の血管狭窄・閉塞およびもやもや血管を生ずる疾患です。小児では脳虚血で発症することが多く、知能遅延を伴う様々な神経症状を呈します。大人でも脳虚血や脳出血で発症します。もやもや病に対しては血行再建術が有効です。血行再建術には直接法(STA-MCA吻合術)と間接法(EDAS(encephalo-duro-arteiro-synangiosis))があり、当院では合併症がほとんどない間接法を主に行います。(天神博志)の約50例の経験では治療後に脳梗塞を生じた症例は1例のみであり、効果、安全性の高い治療法です(参考文献 7, 8, 9)。間接法
        脳動脈瘤スクリーニングのMRI検査したところもやもや病が発見され治療した症例
        46歳、女性、一年前より左上下肢のTIAがあった。
        MRIを受ける機会がなかったが脳動脈瘤スクリーニングの話を聞いて受けようと思いました。
        MRAでもやもや病と診断、治療し現在は症状はありません。
    •   三叉神経痛、顔面けいれんに対する微小血管減圧術

      • 脳神経外科においても痛みなどを扱う機能外科の重要性がより高まっています。三叉神経痛や顔面けいれんに対して16例に微小血管減圧術を施行してきました。年齢は37歳から82歳、女性14例、男性2例、三叉神経痛8例、顔面けいれん7例、舌咽神経痛1例です。血管の単純な圧迫の場合には血管を確実に遊離とすることにより全例に治療効果をえています。(参考文献10)

    • 参考文献

      • 1. 天神博志ら:パッチグラフトを用いた頚動脈血栓内膜剥離術
        脳卒中の外科 32 49-54 20042. 井上靖夫、天神博志ら:両側内頚動脈狭窄・閉塞症に対する外科的血行再建術および血管内治療の併用療法
        脳卒中 27 292-298 20053. Tenjin H et al.:Factors for achieving safe and complete treatment for unruptured saccular aneurysm smaller than 10mm by simple clipping or simple coil embolization.World Neurosurgery 9: 308-316, 2016
        要約:13年10月-15年9月に治療した10mm以下嚢状未破裂脳動脈瘤59個を統計学的に検討した。

        <結果>

        1. 転帰についてはmRS 2ポイント以上の低下は2例(3.4%)(76歳以上)であった。
        2. 血管撮影上の再開通は完全閉塞53例(89.8%)であった。
        3. 適応基準に入る症例ではmRS 2ポイント以上の低下は無し(0%)。完全閉塞 40例(98%であった。
        4. 年齢と転帰では76歳以上4例中2例がmRS2ポイント以上の低下となり有意に治療転帰は悪かった(P<0.01)

        <結論>

        75歳以下10mm以下の未破裂動脈瘤では部位、形状による治療選別、術前の詳細画像、愛護的手術操作などによりsimple clipping、simple coil塞栓術で安全かつ完全に治療しえた。
        4. 天神博志ら
        10mm以下未破裂嚢状脳動脈瘤に対する安全かつ完全なclippingあるいはcoil塞栓術の選択基準
        The Mt.Fuji Workshop on CVD vol.56 pp59-62 2017
        5. 天神博志ら
        未破裂脳動脈瘤予防治療に有効なMRAngiographyを用いた脳動脈瘤スクリーニング-脳ドック症例と実際に治療を必要とした症例との比較検討-
        脳卒中の外科 in press
        結語:未破裂裂脳動脈瘤予防治療行うための脳動脈瘤スクリーングを考えるならば高血圧、脂質異常症、脳血管障害の既往、頭痛を持つ例、特に女性、を対象とするのがより効果的である。
        6. 天神博志ら
        3DTOF撮像、フリーハンド3D再構成を用いた未破裂脳動脈瘤診断
        静岡赤十字病院研究報 2020
        7. 前川正義,天神博志ら
        小児もやもや病患者に対する早期両側血行再建術の必要性
        小児の脳神 20 327-332 1995
        8. Tenjin H et al.
        Multiple EDAS (encephalo-duro-arterio-synangiosis). Additional EDAS using the frontal branch of the superficial temporal artery (STA) and the occipial artery for pediatric moyamoya patients whom EDAS using the parietal branch of STA was insufficient Childs Nerv Syst 13 220-224 1997
        9. 天神博志
        若年発症小児もやもや病に対する多重EDASの長期予後
        小児の脳神経 36 411-415 2011
        10. 天神博志
        痛みの外科 -疼痛に対する脳神経外科的治療-
        京都第二赤十字病院雑誌 28 27-35 2007

注射(ボツリヌス療法)での症状改善

手足の筋肉が緊張して動かしにくいその症状、脳卒中の後遺症である「痙縮」の可能性があります。

発症から時間が経っている場合でもまずはご相談ください。

当院では、注射(ボツリヌス療法)での症状改善を図っています。

担当医師:吉川 達也 医師

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