股関節の病気について

変形性関節症について

年を重ねるにつれて、体重の負荷がかかる股関節の病気になる人が増えています。股関節の痛みの大部分は変形性股関節症によるものです。変形性股関節症は女性に比較的多く、発症年齢は40〜50歳が多いとされています。
股関節の痛みは、高齢者が自立した生活を送れなくなり、将来的に要介護になってしまう大きな原因の一つとされています。そうなってしまうことを避けるためにも、変形性股関節症という疾患を知り、早めの対策を行うことが重要です。

【病態と症状】

変形性股関節症は股関節(脚のつけ根)の軟骨が擦り減る病気です。軟骨は表面が滑らかで弾力があり、関節を動かしたり、体重がかかったときの衝撃をやわらげるクッションの役目をしています。軟骨が擦り減ると痛むようになります。
初期の症状は歩き始め、長距離歩行後の痛みです。痛む部位は脚のつけ根であることが多いのですが、臀部、太もも、ひざの場合もあります。進行すると擦り減った軟骨の下のむき出しになった骨同士がこすれあって痛みが強くなり、歩行や階段昇降が困難になります。また、関節の動かせる範囲が狭くなり、靴下の着脱、足の爪切りがやりにくくなります。股関節の動かせる範囲が極端に狭くなると腰、ひざに負担がかかり病気を併発することがあります。

【保存療法】

現在の医療では擦り減った軟骨を回復させることはできません。つまり、病期は進行する可能性はありますが後戻りはできません。進行しないように脚の負担を減らすことが大事です。進行を防げれば痛みは軽減する可能性があります。体重の管理は大切で、2-3kg減量すると症状が軽くなることが多いので目標にして下さい。 また、脚の筋力が弱いと関節の負担が増えます。筋力アップが必要ですが体重の負荷が余りかからない方法が推奨されます。座ってあるいは寝て脚を持ち上げる・水中での運動(水中ウォーキング、水泳)が有効です。歩行は毎日の散歩としては30~40分程度は良いのですが過度にはしないで下さい。対症療法として消炎鎮痛剤の使用がありますが、長期連用すると胃潰瘍・腎臓の障害などの副作用が起こる可能性がありますので調子が悪い時や外出の前などに限定した方が安全です。

【手術療法】

これらの保存療法で症状が改善しない場合は手術療法が選択されます。手術方法として骨・軟骨を温存する「骨切り術」と「人工股関節置換術」があります。骨切り術は主に若い人、関節軟骨が残存している人に適応があり、関節症の状態によって種々の方法があります。重症の場合は人工股関節置換術の適応です。人工股関節置換術は症状の改善が著明で、歩行や日常生活動作が楽になります。

人工股関節置換術とは

傷んだ股関節の寛骨臼側と大腿骨側にそれぞれに人工関節を設置し関節機能を再建する手術です。痛みが少なくなり、スムーズな関節の動きが可能となり歩行能力が改善します。
当院の人工股関節置換術の特徴は最小侵襲手術 (MIS) と3次元術前計画&ナビゲーションシステムの使用による早期回復と動作制限の撤廃です。
当院の最小侵襲手術は8-12cm程度の皮膚切開と筋肉を切離せずに手術する前外側アプローチを採用しており、術後の回復も早く、10-14日程度の入院ですみ、早期に日常生活への自立を達成できます。
術前検査で撮影したCTデータも用い3次元術前計画ソフトで患者さんそれぞれの骨の形にあった人工関節を選択します。またナビゲーションシステムを使うことにより、正確かつ再現性の高い人工関節の設置が可能となります。正確な人工関節の設置により合併症である脱臼の低減、長期成績の向上が期待できます。
この MISとナビゲーションシステムの使用により、当院では通常の手術の場合術後の禁忌肢位は設置せず、日常生活における動作制限の指導は行なっておりません。(ただし特殊な変形症例、再手術症例の場合は動作制限を設けております)

ナビゲーションシステムについて

ナビゲーションシステムは赤外線を使用して手術部位や手術器具の位置を計測し、コンピューターの画面上に表示することで、高い精度で計画通りの手術を行う支援システムです。 人工関節の耐久性には正確にインプラントの設置が重要です。ナビゲーションシステムを利用することで、術前に計画した患者さんに最適な人工関節の設置位置・角度を正確に再現することができます。(ナビゲーションシステムは中村卓医師の手術で用いられています)

ナビゲーション利用のメリット

・CT画面をもとに三次元の術前計画(準備)が可能。
・最適と思われる場所や角度に人工関節を設置する設計図をあらかじめ確認できる。
・手術中にモニターを確認しながら設計図に沿って安全・正確に手術を提供できるようになる。

人工関節置換術の入院から退院までの流れ

手術前日

入院日は原則、手術日の前日です。
手術前日22時以降は、飲食・飲水はできません。

手術当日

手術までに手術室看護師が術前訪問を行います。手術の内容や流れをご説明させていただきます。なお手術についてわからないこと、気になることがあれば術前訪問の際にお尋ねください。
準備…注射・点滴などの事前準備を行います。その後、徒歩、または車イスで手術室へ移動します。
手術…全身麻酔にて手術を行います。

手術翌日~

ベッドから起き上がることができます。
立ち上がり練習、歩行器や松葉杖などを使ったリハビリテーションを開始します。
リハビリについては理学療法士が毎日行います。余裕が出てくれば無理のない範囲で自主トレーニングや歩行運動もお願いしております。

術後2~3週

リハビリテーションや体の状態に合わせて退院の判断を医師が行います。

退院後

外来通院にて術後確認の診察を行います。また、個人の状態に合わせてリハビリテーションを受けていただきます。
※上記は一般的な予定であり、個人差があります。